ゴリラ先生のやさしい投資教室│第19回 レバレッジ型商品っておトクなの?長期保有に潜む“減価のワナ”と注意点

スーツとメガネがトレードマークの、頼れるお金のナビゲーター。
知識は豊富だけど説明はやさしく、質問には真剣に向き合ってくれる。
今日もハルトとミナミの“なぜ?”に、穏やかに答えてくれる先生。

YouTubeで見たFIRE動画に憧れて、投資に興味を持った13歳。
テンバガーや仮想通貨にすぐ飛びつく、元気でちょっとビビりなタイプ。
まだ投資は未経験で、ミナミやゴリラ先生に教わりながら勉強中。

SNSで投資を知り、「お金の勉強って大事かも」と思い始めた13歳。
慎重派で、定期預金や貯蓄型保険に安心感を覚えるタイプ。
ハルトの勢いに振り回されつつも、一緒に少しずつ学んでいる。

はじめに:FIREを目指すハルト、レバレッジETFに興味を抱く

ゴリラ先生、ボク最近すごいの見つけたんだ!S&P500の2倍動くETFってやつ。これ使えば、FIREにめっちゃ近づけるんじゃない?

レバレッジって、なんか仕組みが難しそうな印象があります…大丈夫なんですか?

良い質問ですね。レバレッジ型の商品は、使い方を間違えなければ効果的な場面もありますが、長期投資においては注意が必要な特徴があります。今日はそのポイントを一緒に学んでいきましょう。
レバレッジ型商品とは?どういうしくみなのか

まず、レバレッジとは「てこの原理」のことです。小さな力で大きな効果を生む――投資の世界では、資金の動きを拡大させる仕組みとして使われています。レバレッジ型ETFとは、ある指数の日々の値動きに対して、2倍や3倍の動きをするように設計された商品なんです。

たとえばS&P500が1日で1%上がったら、そのレバレッジETFは2%上がるってこと?

その通りです。ただし、ここで気をつけるのは“日々”の値動きに対して倍率がかかるという点です。長期間で見ると、単純に2倍になるとは限りません。

えっ、長く持っても2倍にはならないんですか?

そこがレバレッジ型商品の落とし穴です。
減価とは何か?なぜ価値が目減りするのか

レバレッジ型商品の大きな特徴のひとつに「減価(げんか)」があります。これは価格が上下を繰り返すうちに、資産がだんだんと目減りしていく現象です。

え!?なんで減っちゃうの?上がったり下がったりしてるだけでしょ?

たとえば、100円の商品が1日目に10%上がると110円になります。次の日に10%下がるとどうなると思いますか?

110円の10%は11円。110円から11円を引いたら99円…あれ?減ってますね?

その通り。元の100円には戻っていませんね。これが“減価”の原理です。レバレッジをかけることでこのズレが拡大され、価格が行ったり来たりするだけで、資産がじわじわ削られてしまうのです。

なるほど…上がった分だけ得をするんじゃないのか…。
なぜ長期保有に向かないのか?

ということは、長く持つと減価が進んで、資産がどんどん減るんですね。

まさにその通りです。レバレッジ型商品は“短期向け”に作られているため、1日単位では連動していても、1カ月・1年と経つうちに、想定外のパフォーマンスになることがよくあります。

でもS&P500って上昇傾向でしょ?2倍のやつ持ってたら、もっと上がるんじゃないの?

指数がきれいに右肩上がりなら可能性もありますが、実際の相場はそう単純ではありません。上下を繰り返しながら進むため、“ブレ”の大きさが資産を削っていく”んですよ。
実際のチャートではどうだった?

例えば、2010年から2020年の10年間でS&P500が約2.5倍になったとします。その2倍レバレッジETFが5倍になったかというと、そうではありません。価格のブレにより、レバ型ETFは途中で何度も減価を受けて、思ったほどのリターンになっていないんです。

実際に数字を見ると、理論と違うってことがあるんですね。

はい。“期待したパフォーマンスが得られない”のは、仕組みを知らずに長期保有した人が一番つらい思いをする場面です。
レバレッジ型ETFはどう使えば適切か?

でも短期間だけ持つなら、いいときもあるってこと?

はい、明確に上昇トレンドが出ているときや、短期のイベントでリターンを狙いたいときには、戦略的に使う人もいます。ただし、これは経験豊富な投資家が、きちんと出口戦略まで決めて運用するケースです。

つまり、初心者は手を出さない方が無難ってことですね。

その通りです。“買わない”という判断も、立派な投資戦略のひとつですからね。
まとめ:長期投資は“減らないしくみ”が大切

長期投資では、“価格が減りにくい仕組み”を選ぶことが、結果として資産を守ることにつながります。FIREを目指すハルトさんや、老後の安心を大切にしたいミナミさんには、インデックス型のシンプルな投資信託が最もおすすめですよ。

ボク、やっぱりS&P500にコツコツ積み立てるよ。焦らないのがいちばんだね。

私はオルカンで分散投資を続けます。レバレッジのことも、ちゃんと勉強できてよかったです。

今日のように、“仕組みを理解してから判断する”ことが、賢い投資家への第一歩ですよ。