ゴリラ先生のやさしい投資教室│第25回 なぜ減る?なぜ損する?新興国通貨建て債券の落とし穴

スーツとメガネがトレードマークの、頼れるお金のナビゲーター。
知識は豊富だけど説明はやさしく、質問には真剣に向き合ってくれる。
今日もハルトとミナミの“なぜ?”に、穏やかに答えてくれる先生。

YouTubeで見たFIRE動画に憧れて、投資に興味を持った13歳。
テンバガーや仮想通貨にすぐ飛びつく、元気でちょっとビビりなタイプ。
まだ投資は未経験で、ミナミやゴリラ先生に教わりながら勉強中。

SNSで投資を知り、「お金の勉強って大事かも」と思い始めた13歳。
慎重派で、定期預金や貯蓄型保険に安心感を覚えるタイプ。
ハルトの勢いに振り回されつつも、一緒に少しずつ学んでいる。

ハルトとミナミの疑問

ねえミナミ、見てよこれ!“新興国の通貨建て債券、元本保証で年利10%!”だってさ。これ最高じゃない?ボク、これに全部つぎ込んだらすぐにお金持ちだよ!

えっ、そんなおいしい話あるの?利回りが日本の国債の何倍も高いけど、本当に大丈夫なのかな…。

おやおや、ハルト君。ちょっと落ち着きましょう。実はね、私も資産運用を始めた頃に、トルコリラ建て債券で“夢の高利回り”を信じて飛びつき、大失敗をした経験があるのですよ。その時の教訓を交えて、新興国通貨建て債券の正体を一緒に学んでいきましょう。
新興国通貨建て債券とは?

まず、新興国通貨建て債券とは、メキシコペソやブラジルレアル、トルコリラなどの通貨で発行される債券のことです。円やドルに比べて利回りが高く、投資家の目を引きます。

やっぱり利回りが高いってお得なんじゃないの?

表面だけ見ればそう思うでしょう。けれど利回りが高いのには必ず理由があります。つまり、“それだけリスクが高いから”なんですよ。
メリット:なぜ投資家が注目するのか

まず、なぜなぜ投資家が注目するのかを考えていきましょう。
- 高い利回り:先進国の債券が年1%程度でも、新興国債券は年5〜10%といった数字が並ぶことがある。
- 通貨分散の効果:円やドル以外の通貨を持つことで、資産全体の分散効果が期待できる。
- 新興国の成長に乗れる可能性:人口増加や経済発展が続く国の成長の一部を取り込める。

なるほど。メリットだけ聞けば魅力的に見えますね。
デメリット:甘い話には裏がある

でもね、実際に投資すると“こんなはずじゃなかった”という落とし穴が待っているのです。
- 為替リスク
- 通貨が下落すれば、利息以上の損失が出る。
- 例えばトルコリラは2010年代以降、数年で半値以下になり、利回り10%どころか資産が半分以下に減った人もいる。
- 信用リスク
- 発行国の経済や財政が不安定で、デフォルト(債務不履行)の可能性がある。
- 実際にアルゼンチンは過去9回もデフォルトを経験し、投資家は大きな損失を負った。
- 流動性リスク
- 日本円やドル建てに比べて市場規模が小さい。売りたい時に売れず、値が大きく動くこともある。

うわぁ…。じゃあ“元本保証で高利回り”っていうのは信用しちゃいけないの?

そうです。“保証”という言葉に惑わされてはいけません。実際には元本は保証されていないケースがほとんどで、為替や信用リスクを背負う分だけ高い利回りを提示しているのです。
ゴリラ先生の失敗談:トルコリラ債券の苦い思い出

私も昔、トルコリラ建て債券を買ったことがありました。当時は『これなら毎年高い利息が入ってくる!夢の不労所得だ!』と思ったのです。
でも現実は違いました。トルコの政治や経済が不安定になり、金利はどんどん上昇、通貨は急落。受け取った利息以上に為替差損で元本が削られ、結果的には“高利回りどころか大損”という苦い経験になりました。

先生も失敗したんですね…!実体験を聞くと、やっぱり簡単に飛びついてはいけないんだって実感します。

ボクも気をつけないと…。おいしい話には裏があるんだな。
投資するとしたらどうすべきか?

新興国通貨建て債券を完全に否定するわけではありません。ただ、活用するとしても“補助的”に使うのが現実的です。
- ポートフォリオのごく一部にとどめる
→ 資産の5%以内など、万一ゼロになっても生活に影響が出ない範囲に。 - 為替ヘッジ付き商品を検討する
→ 為替リスクを抑えられるが、ヘッジコストがかかるため利回りは下がる。 - 国ごとのリスクを調べてから投資する
→ ブラジルレアルのように一時的に下落後回復した事例もあれば、アルゼンチンのように何度もデフォルトしている国もある。

ただ利回りが高いだけじゃなく、国の背景を調べないといけないんですね。
まとめ

最初は“元本保証で高利回りなら最高!”って思ったけど、そんなに甘くないんだな…。先生の失敗談を聞いて目が覚めたよ。

やっぱり投資は“リターンとリスクは表裏一体”なんですね。特に為替リスクは想像以上に怖いです。

その通りです。新興国通貨建て債券は高利回りという魅力がある一方で、為替・信用・流動性といった大きなリスクを背負う商品です。初心者が資産形成の主軸にするには不向きですが、リスクを理解したうえでポートフォリオのスパイスとして少額組み込むなら、意味があるかもしれません。
ただし一つ忘れないでください。“高利回りには必ず裏がある”。私の失敗を反面教師に、冷静な判断を心がけてくださいね。