SBI欧州高配当株式ファンド(分配型)最新決算を解説|無配の背景、運用状況、コスト構造をチェック

はじめに
「SBI欧州高配当株式ファンド(分配・年4回決算型)」は、2023年12月に設定された比較的新しい公募型投資信託です。
ブラックロック社が運用するETF「iシェアーズ 欧州株式(除く英国)ETF(IEUX)」に実質投資することで、欧州の高配当株式に広く分散投資することを目的としています。
本記事では、2024年4月11日から10月10日までの第2作成期(=第3期・第4期決算)の内容を中心に、以下の点をわかりやすく解説します。
- ファンドのパフォーマンスと資金流入
- 無配が続いた理由
- 組入内容と投資方針
- 信託報酬や経費の詳細
- 今後の展望
ファンドの運用成績と基準価額の推移
- 期間:2024年4月11日〜10月10日
- 第3期基準価額(7月10日):9,958円(前期比 +0.93%)
- 第4期基準価額(10月10日):9,902円(前期比 ▲0.56%)
- 期間騰落率合計(4月〜10月):概ね +0.37%(分配金再投資ベース)
第2作成期において、ファンドの基準価額は小幅ながら上昇し、プラスで推移しました。ただし、第3期・第4期ともに分配金はゼロという結果に終わっています。
分配金が出なかった理由
このファンドは「年4回決算=年4回の分配機会」を持つ仕組みですが、第3期(7月)・第4期(10月)も引き続き無配当となりました。
理由は非常にシンプルで、投資先であるETF(IEUX)からの分配金(配当)が期中に発生しなかったためです。
- 分配対象収益金(1万口あたり):0.01円(第3期)、0.00円(第4期)
- 支払分配金:どちらの期も0円
つまり、分配金の原資が実質的に存在しなかったことから、分配が見送られました。
欧州市場と為替の動向
第2作成期に該当する2024年4月〜10月の欧州市場は、以下のような展開を見せました。
欧州市場の特徴
- 欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測が進む中、ユーロ圏のインフレは再加速の兆しを見せ、金融政策は依然不透明
- ドイツやフランスを中心とする製造業指標が低迷し、景気回復期待が弱含み
- 株式市場は方向感に乏しいながらも、下値は限定的
為替の影響
- 1ユーロ=164円台(7月)→163円台(10月)と小幅な円高
- 円高はユーロ建て資産の円換算評価をやや押し下げる要因
こうした背景から、基準価額の値動きは落ち着いていたものの、配当金の発生にはつながりませんでした。
投資対象の実態:IEUXへの集中投資
本ファンドの投資構造は非常に明快です。ベビーファンドはマザーファンドを通じて、ブラックロック社のETF「iシェアーズ 欧州株式(除く英国)ETF(IEUX)」にほぼ全額を投資しています。
- IEUXへの組入比率:99.8%以上
- その他資産(現金等):0.2%未満
つまり、実質的にIEUXそのものに投資していると見なせる内容です。IEUXは英国を除く欧州主要国の高配当株に分散投資しており、ファンドの値動きや配当の有無はこのETFに強く連動します。
費用とコスト構造
本ファンドの総経費率(年率換算)は以下の通りです。
項目 | 比率(年率換算) |
---|---|
ベビーファンド側の費用(信託報酬等) | 約0.19% |
ETF側の費用(IEUX) | 約0.10% |
合計 | 約0.29% |
0.3%未満という経費水準は、欧州株式を対象とする投資信託としては良好な水準です。手数料がリターンを大きく圧迫する心配は少ないといえます。
純資産と資金動向
- 期末純資産総額:約54億円
- 追加設定元本:約36億円(第2作成期中)
- 解約元本:約2億円弱
純資産は安定しており、解約も少なく、個人投資家からの安定的な関心が継続していることが伺えます。
今後の展望と投資判断
第3期・第4期ともに分配なしという結果にはなりましたが、今後については以下の点が注目です。
- IEUXの四半期配当は今後の分配に反映される可能性あり
- ユーロ圏の金融政策転換が株価上昇要因になるか
- 分配を目的にするなら、過去の実績ではなく今後の配当スケジュールに着目すべき
また、為替の影響をダイレクトに受ける商品であるため、円高局面では評価損が出やすい点にも注意が必要です。
まとめ
SBI欧州高配当株式ファンド(分配型・年4回決算)は、以下の特徴を持つファンドです:
- 実質的にIEUXに100%近く投資する明快な構造
- 年4回の分配機会があるが、原資がないと無配となる
- 欧州市場の回復やETFの分配実績次第でインカム投資先として期待できる
- 総経費率は0.29%前後と低コスト
現時点では無配が続いているものの、IEUX自体の分配水準や時期を見ながら、今後の分配チャンスを見極める必要があります。
短期的な分配金だけを狙うのではなく、中長期での構造理解と投資意図の整理が大切になるファンドです。