ゴリラ先生のやさしい投資教室│第29回 節税メリットVSシンプルさ 新NISAとiDeCoの本当の違い

はじめに

先生、この前いとこから相談されたんです。社会人になったばかりで、投資を始めたいんですけど『NISAとiDeCo、どっちがいいの?』って。

お、いとこさんも投資デビューか!いいじゃん。…でも確かに、どっちから始めたらいいか迷うよな。

とても良い質問ですね。NISAとiDeCoはどちらも税制面で有利な制度ですが、仕組みや特徴が大きく違います。今日はお二人と一緒に、NISAとiDeCoを比較しながら考えてみましょう。
新NISAの特徴

まずは新NISAから。2024年に制度が大きく拡充されましたね。
- 年間投資枠が拡大(成長投資枠とつみたて投資枠)
- 運用益が非課税で、いつでも売却して現金化可能
- 期限がなく恒久化されたので、長期投資に安心

新NISAは非常にシンプル。配当金や分配金、譲渡益に掛かる約20%の税金が免除される。これだけです。

儲かった分から税金を払う必要がないってことだな!

仮に投資で儲かった分が100万円だとしたら、20万円分の税金が非課税。つまり20万円分を得するってことですよね。

そのとおりです。付け加えると、旧NISAは非課税期間があり、非課税期間が終わったら課税対象でした。新NISAは非課税期間が無期限のため、非課税期間後の課税額を試算するという手間も必要ありません。その点でも非常にシンプルになりました。
iDeCoの特徴

一方でiDeCoは“個人型確定拠出年金”と呼ばれる制度です。主に老後資金づくりを目的としています。
- 掛金が全額所得控除になるので節税効果が高い
- 運用益も非課税
- 受け取り時にも退職所得控除や公的年金控除が使える

こうして見ると節税メリットはすごいですね。

ただし注意点もあります。60歳まで引き出せないため流動性が極めて低いのです。たとえば、老後資金のつもりで積み立てていたが、思ったより利益が出た。半分は住宅購入資金に転用しよう、と思っても60歳までは引き出せないため難しいというケースが考えられます。

年金にするつもりなんだからいいじゃん!と思ってたけど、確かにそういうパターンだと困るな~。

さらに制度自体がとても複雑です。
iDeCoの複雑さ

まず、受け取り時の税制優遇は『退職金の有無』『年金額』『扶養家族の状況』『今後の収入変化』など、多くの条件に左右されます。さらに将来、退職所得控除の制度変更や特別法人税の復活といった可能性も残っています。

えっ…そんなにいろいろ考えなきゃダメなの?聞いてるだけで頭がくらくらしてきた…。

しかも複雑なのは受け取り時だけではありません。掛金の所得控除も、その人の年収や扶養家族の有無によって効果が大きく変わります。高所得者なら節税効果は大きいですが、扶養が多い人や所得が少ない人ではメリットが小さくなることもあります。

なるほど…。社会人になったばかりで収入も安定していないいとこには、あまり効果が出ない可能性もあるんですね。

その通りです。だからこそ、iDeCoは“税制を熟知した人向け”といえるのです。
NISAとiDeCoの比較まとめ
項目 | 新NISA | iDeCo |
---|---|---|
投資目的 | 柔軟な資産形成 | 老後資金の確保 |
流動性 | いつでも売却可 | 60歳まで引き出せない |
節税効果 | なし | 掛金が全額所得控除 |
運用益 | 非課税 | 非課税 |
受取時の税制 | 非課税 | 一定額非課税 |
まずはNISAから始めよう

じゃあ、社会人デビューのいとこさんには、まずはNISAのほうがいいってことだな。

はい。iDeCoは流動性リスクが高く、制度も複雑です。まずはシンプルで柔軟性のあるNISAから始めて投資に慣れるのが賢明でしょう。

なるほど。いとこには『最初はNISA、慣れてきたらiDeCoも検討してみたら?』って伝えてみます。

ええ、それが一番良いアドバイスになるでしょう。投資は“続けられる仕組み”が大切です。まずは分かりやすくシンプルなNISAで経験を積みましょう。
まとめ
- 新NISAとiDeCoはどちらも強力な制度だが、目的や特徴が異なる
- iDeCoは節税メリットがあるが、所得や扶養家族によって効果が変わる上に制度が複雑で流動性も低い
- 初心者が始めやすいのは、シンプルで柔軟なNISA

投資をスタートしたばかりの社会人には、まずNISAがおすすめです。iDeCoをスタートしようか悩んでいる方は、この記事を参考にしてもらえると幸いです。