欧州vs米国の高配当株を比較!SBI欧州高配当株式ファンド8月の最新動向【月次レポート】

はじめに
SBIアセットマネジメントが展開する「SBI高配当株式シリーズ」は、日本・米国・欧州・全世界と、幅広い地域に分散して高配当投資ができるラインナップを持っています。中でも「SBI欧州高配当株式ファンド(分配・年4回決算型)」は、米国中心の投資に偏りがちな日本人投資家にとって、ユーロ圏や英国といった欧州市場にアクセスできる貴重な選択肢です。
今回は2025年8月の月次レポートをもとに、基準価額や純資産の推移を整理しつつ、米国高配当株ファンド(SCHD連動型)との違いに注目して解説します。
基準価額と純資産の推移
2025年8月末の基準価額は11,548円で、前月比+180円の上昇となりました。欧州株式市場全体を示すSTOXX Europe 600指数も+0.7%と小幅に上昇しており、ファンドの値動きもこれに沿った形です。
純資産総額は199.38億円となり、設定以来じわじわと資金流入が続いています。米国株に比べると規模はまだ小さいものの、地域分散を重視する投資家の関心を集めているといえるでしょう。
分配金の状況
本ファンドは年4回の分配を予定しており、次回は9月を予定しています。マザーファンドの配当利回りは4.59%。高配当株を組み合わせているため、安定的にインカム収入を狙える点は魅力です。
米国のSCHD連動型ファンドも同様に高配当利回りを提供していますが、セクター構成や銘柄の性格が異なるため、分配の安定性に違いがあります。
欧州市場の動向(8月)
8月の欧州市場は、米国FRBの利下げ観測が追い風となり堅調でした。一方で、
- 米国との「相互関税」懸念
- フランス政局の不安定さ
- ウクライナ情勢の長期化
といった地政学的リスクも根強く、市場全体は楽観と警戒が入り混じった状況です。
セクター別ではヘルスケアやエネルギーが好調。国別ではスペイン、デンマークなどが指数をけん引しました。
今年はここまで順調な欧州市場でしたが、現在は“見極めモード”に入ったと考えていいかもしれません。
上位銘柄の特徴
2025年8月時点の上位組入銘柄は以下の通りです。
- サバデル銀行(スペイン・銀行、配当利回り6.30%)
- ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(英国・タバコ、配当利回り5.71%)
- HSBC(英国・銀行、配当利回り4.98%)
- ユニクレディト(イタリア・銀行、配当利回り3.64%)
- エルステ銀行(オーストリア・銀行、配当利回り3.69%)
上位銘柄に銀行株が目立ちます。特にスペインのサバデル銀行は買収観測で株価が上昇し、ファンドのプラス要因となりました。
米国ファンドとの比較で見える違い
ここからが今回の記事のポイントです。SBIの米国高配当株式ファンド(SCHD連動型)と比較すると、欧州ファンドには次のような違いがあります。
1. セクター構成の違い
- 米国(SCHD):生活必需品、エネルギー、ヘルスケアが中心
- 欧州ファンド:銀行株をはじめとする金融セクターの比重が大きい
米国は消費や医療といったディフェンシブ産業が主役なのに対し、欧州は銀行やタバコなど「高利回りの古典的高配当銘柄」が多いのが特徴です。
2. 景気感応度の違い
銀行株は金利動向や景気に敏感です。そのため、欧州ファンドは米国に比べて景気循環の影響を受けやすいといえます。
一方で、金利が高止まりする局面では利ざやが拡大し、配当原資が増えるというメリットもあります。
3. 地域リスクの違い
米国市場は一国に集中している分、政治・金融政策が比較的シンプルです。
欧州は多国籍市場であり、フランス政局や英国ブレグジット後の不透明感、ウクライナ情勢など、多様なリスクが絡み合います。
これらのリスクを受け止めながらも、高配当株という形で投資機会を提供しているのが欧州ファンドの個性です。
4. 通貨分散のメリット
米国株に集中するとドル建てリスクを強く受けますが、欧州株に投資することでユーロやポンドといった通貨分散効果を得られます。為替変動はリスクでもありますが、長期投資においては分散の一形態として機能します。
投資家が注目すべきポイント
今回の8月レポートから投資家が押さえるべき点は以下の通りです。
- 金融セクター偏重の構造
→ 高利回りを実現する一方で、景気や金利動向に敏感。 - 米国との補完関係
→ 米国はディフェンシブ主体、欧州は金融主体。両者を組み合わせるとバランスが取れる。 - 欧州特有のリスク
→ 政治・地政学リスクをどう許容するかが投資判断のカギ。
高配当銘柄の分散の一角として抑えておく魅力は十分あるといえます。
まとめ
2025年8月の「SBI欧州高配当株式ファンド」は、基準価額が11,548円へと上昇し、純資産も堅調に増加しました。サバデル銀行やロールス・ロイスの好調が寄与する一方で、エネルギー関連の一部銘柄やSAPはマイナス要因となりました。
しかし今回のレポートで最も注目すべきは、米国高配当株ファンド(SCHD連動型)との違いが鮮明になったことです。
米国は「生活必需品・ヘルスケア中心の守り」
欧州は「金融セクター偏重で高利回りを狙う」
両者を比較することで、投資家は「守りと攻めをどう組み合わせるか」という視点を得られるでしょう。
米国株に偏りがちなポートフォリオに、欧州株を組み合わせることで地域分散・通貨分散の効果も期待できます。
高配当投資の安定性を求めつつ、欧州特有の高利回り銘柄で収益機会を広げたい投資家にとって、本ファンドは有力な選択肢といえるでしょう。