SBI・S・米国高配当株式ファンドに変化!半導体株が上位にランクイン【2025年8月月次レポート】

はじめに
SBIアセットマネジメントが提供する「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)」は、米国の代表的な高配当ETFである「シュワブ米国配当株式ETF(SCHD)」を実質的な投資対象としています。高配当株の安定性と米国市場の成長性を兼ね備えるファンドとして、日本の個人投資家にも人気が高まっています。
今回は2025年8月末時点の月次レポートを基に、基準価額や純資産の動向に加えて、組入銘柄の変化に焦点を当てて解説します。特に注目すべきは、半導体大手テキサス・インスツルメンツが新たに組入上位10銘柄に加わった点です。ディフェンシブ色の強い高配当ETFにおいて、成長性を担う半導体株が上位入りした意味を掘り下げてみましょう。
基準価額と純資産総額の推移
2025年8月末の基準価額は9,649円となり、前月末の9,466円から+183円の上昇でした。7月に続いて堅調な値動きを維持しており、安定感がうかがえます。
純資産総額は1,552.13億円と前月から約48億円増加。基準価額の上昇に加えて新規資金の流入が続いており、日本の投資家の「ドル建て高配当志向」が根強いことを示しています。
分配金の実績
本ファンドは年4回の分配を予定しており、直近では6月に1万口あたり62円を支払いました。8月は分配がなく、累計では62円の実績となっています。
分配金は市場環境によって変動しますが、投資家にとって定期的なインカム収入が得られる点は大きな魅力です。さらに、分配金を再投資すれば長期的な複利効果が期待できます。
セクター別構成比率の特徴
8月のセクター別比率は以下の通りです。
- エネルギー:19.83%
- 生活必需品:19.05%
- ヘルスケア:15.74%
- 資本財・サービス:11.71%
- 金融:9.18%
- 一般消費財サービス:8.59%
- 情報技術:8.47%
- 通信サービス:4.47%
- 素材:2.93%
- 公益事業:0.04%
上位3セクター(エネルギー・生活必需品・ヘルスケア)で約55%を占め、依然としてディフェンシブ色が濃い構造です。その一方で、情報技術セクターが着実に比重を高めつつある点が注目されます。
上位銘柄に変化 ― テキサス・インスツルメンツが登場
組入上位10銘柄は以下の通りです。
- シェブロン(エネルギー) 4.39%
- コノコフィリップス(エネルギー) 4.33%
- アルトリア・グループ(生活必需品) 4.26%
- ペプシコ(生活必需品) 4.24%
- アッヴィ(ヘルスケア) 4.22%
- ホーム・デポ(一般消費財) 4.11%
- メルク(ヘルスケア) 4.04%
- シスコシステムズ(情報技術) 4.03%
- テキサス・インスツルメンツ(情報技術) 3.99%
- ベライゾン(通信サービス) 3.84%
7月時点ではランク外だったテキサス・インスツルメンツ(TI)が新たにランクインしました。代わりにアムジェン(バイオ医薬品大手)が外れており、銘柄構成に小さな変化が生まれています。
高配当戦略と半導体株の融合
高配当ETFは一般的にディフェンシブ銘柄を中心に構成される傾向があります。生活必需品やエネルギー、ヘルスケアといった「景気に左右されにくい」分野が多く、株価の安定性と配当の持続性を重視するのが基本です。
その中で半導体企業であるテキサス・インスツルメンツが上位に組み込まれたことは注目に値します。TIは産業用や自動車向けの半導体を幅広く供給しており、景気循環の影響を受けやすい一方で、長期的には自動車の電動化やIoT需要拡大の恩恵を受ける成長企業です。
さらに、TIは増配企業としても知られ、20年以上連続で配当を増やしてきました。単なる成長株ではなく、「安定したキャッシュフローで株主還元を続けられる半導体企業」という点が、SCHDの組入基準に合致したと考えられます。
ディフェンシブとグロースのバランス
今回の変化は、ファンド全体の性格を変えるほど大きなものではありません。しかし、「高配当=守り」というイメージの中に、成長性を持つ半導体銘柄が含まれることで、ポートフォリオのバランスがより洗練されたものになったといえます。
- 守りのセクター:エネルギー・生活必需品・ヘルスケア
- 攻めのセクター:情報技術(半導体、通信)
このバランスが、株式市場の不安定さを和らげつつ、将来的な成長の芽を取り込む役割を果たしているのです。
分配金でインカム収入を得つつ、ファンド自体の成長も期待できるSCHDの真骨頂となる動きです。
今後の注目ポイント
今回のレポートを踏まえて、投資家が注目すべき点を整理します。
- 半導体需要の動向
自動車の電動化やAIの普及など、半導体は今後も成長が見込まれる分野です。TIの組入比率の推移は要チェックです。 - 原油価格とエネルギー比率
依然としてエネルギーセクターの比重が20%近くを占めるため、原油価格の上下はファンド全体の成績に直結します。 - ドル円相場の影響
8月の基準価額上昇には円安効果も含まれています。為替が円高に振れた場合は逆風となる可能性があります。
まとめ
2025年8月の「SBI・S・米国高配当株式ファンド」は、基準価額が9,649円へ上昇し、純資産総額も1,552億円を突破しました。セクター比率に大きな変化はなく、依然としてディフェンシブ寄りの構成です。
しかし、テキサス・インスツルメンツが新たに上位銘柄に加わった点は見逃せません。ディフェンシブ戦略に成長性を持つ半導体株を取り込むことで、安定性と将来性を両立する布陣が強化されつつあるといえます。
高配当株投資の枠組みを守りながら、市場の変化を取り込むこの動きは、長期投資家にとって安心感と期待感の両方をもたらすものとなるでしょう。