【J-REIT銘柄紹介その⑤】アドバンス・レジデンス投資法人(3269)~J-REIT選びの5つの視点で徹底解説~

はじめに
アドバンス・レジデンス投資法人(ADR)は、
日本最大規模の住宅特化型J-REITとして、2002年の上場以来、
安定した賃貸収益を基盤に堅実な運用を続けています。
「住宅」はオフィスや商業施設に比べ、
景気変動の影響を受けにくく、稼働率も安定しやすい資産です。
運用を担うのは伊藤忠商事グループ。
同社のブランド力と管理ノウハウを背景に、
長期にわたって高い稼働率と安定した分配金を維持しています。
今回はJ-REIT選びの5つの視点で分析していきます。
① 分配金の安定性
2025年7月期(第30期)の分配金は1口あたり3,192円。
前期(第29期)の5,975円から約46%の減少となりましたが、
これは投資口分割(1口→2口)による名目上の減額です。
実際には、分割後も分配金の実質水準はほぼ横ばいどころか、微増しています。
決算期 | 実際の分配金 | 分割補正後(実質) | 前期比(実質) |
---|---|---|---|
2025年1月期(第29期) | 5,975円 | 約2,987円×2=5,974円 | +0.8% |
2025年7月期(第30期) | 3,192円 | 約6,384円換算 | +6.9% |
営業収益は前年比+11.9%、
当期純利益は9.13億円と過去最高水準を維持しています。
分配金の裏付けとなる利益体質は盤石です。
ADRは、収益の一部を「一時差異等調整積立金」として留保することで、
景気変動時にも分配を維持できる仕組みを構築しています。
この積立金活用による「安定分配方針」は、他のリートでも模範的な運営手法です。
② 物件ポートフォリオの質
アドバンス・レジデンスの特徴は、
「住宅に特化」かつ「首都圏中心」という明快な戦略です。
2025年7月期時点での保有物件は161棟、
取得価格ベースで約2兆4,000億円。
J-REITの中でも屈指の規模を誇ります。
地域 | 構成比 | 稼働率 |
---|---|---|
東京23区 | 約60% | 97.7% |
関西圏 | 約20% | 96.2% |
その他主要都市 | 約20% | 94.8% |
平均稼働率は96〜98%台で推移し、
住宅リートの中でも安定性はトップクラス。
「レジディア」「パークアクシス」など、
中高級賃貸マンションブランドを中心に構成されており、
単身者・共働き世帯・DINKS層など幅広い入居ニーズに対応しています。
③ 財務健全性
決算短信(2025年7月期)によると、財務指標は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
総資産 | 4,939億円 |
純資産 | 2,442億円 |
LTV(有利子負債比率) | 44.9% |
平均借入金利 | 約0.7% |
長期固定金利比率 | 約90% |
LTV(Loan to Value)は、50%を下回る水準を維持。
金利上昇局面でも影響を最小限に抑えることができます。
また、複数回にわたり無担保投資法人債を発行しており、
調達手段の分散化にも成功。
④ スポンサーの信頼性
アドバンス・レジデンス投資法人のスポンサーは、
伊藤忠商事株式会社および伊藤忠都市開発。
伊藤忠グループは、
総合商社の中でも特に不動産・都市開発分野に強みを持ち、
安定した資金調達力とブランド力を兼ね備えています。
物件供給・管理面では「伊藤忠都市開発」が強力に支援し、
「レジディア」ブランドの運営・再開発などを通じて、
ポートフォリオの質を高水準で維持しています。
⑤ 市場評価・利回り水準
2025年10月時点の投資口価格は約86万円前後。
直近分配金(3,192円)を基に算出した分配利回りは約3.6%。
リート全体の平均利回り(4.0%前後)と比べるとやや低めですが、
その分、価格変動が小さく安定志向の投資家に人気があります。
加えて、2025年2月の投資口分割(1→2)により、
投資単位が下がり、個人投資家の参加が増加。
流動性の改善に伴い、株価も底堅く推移しています。
総合評価
観点 | 判定 | コメント |
---|---|---|
①分配金の安定性 | ◎ | 投資口分割後も実質増配。積立金活用による安定運用。 |
②物件ポートフォリオの質 | ◎ | 首都圏中心・高稼働率。住宅特化の安心感。 |
③財務健全性 | ◎ | LTV45%・固定金利比率90%。リスク管理は業界屈指。 |
④スポンサーの信頼性 | ◎ | 伊藤忠グループの支援力が極めて強い。 |
⑤市場評価・利回り水準 | ○ | 利回りは平均並みだが、株価の安定性は抜群。 |
住宅リートの中でも“安定・信頼・成長”を兼ね備えた王道銘柄。
まとめ
アドバンス・レジデンス投資法人(3269)は、
住宅特化+伊藤忠グループの信頼性+安定財務の三拍子がそろった、
まさに“守りのJ-REIT”です。
2025年7月期の分配金は投資口分割の影響で見かけ上減少しましたが、
実質は安定配当を維持しており、
むしろ内部留保を積み上げながら将来の安定性を強化しています。
“数字だけで判断しないことが、リート投資の真髄。”
分配金の「額」より「質」に目を向ける投資家にこそ、
アドバンス・レジデンス投資法人は最適な選択肢です。