J-REIT銘柄紹介その②:野村不動産マスターファンド投資法人(3462)~J-REIT選びの5つの視点で徹底解説~

はじめに
J-REITは、投資家に安定した分配金をもたらす不動産投資信託として人気を集めています。しかし「どのREITを選べばよいのか?」は初心者にとって大きな悩みどころです。
本記事では、国内最大級の総合型REITである野村不動産マスターファンド投資法人(NMF、証券コード3462)を取り上げます。「J-REIT選びの5つの視点」に加え、リーマンショックやコロナショックといった大型ショック耐性も考察し、投資判断の参考にしていただける内容にまとめました。
① 分配金の安定性
- 2025年2月期実績:1口あたり3,453円(利益超過分配なし)
- 2025年8月期予想:3,555円
- 2026年2月期予想:2,977円+利益超過分配金601円=合計3,578円
分配金は3,400~3,600円台を中心に安定推移しています。今後は一部で利益超過分配を活用する計画ですが、基本的には内部成長による分配が中心で、インカム重視の投資家にとって安心感があります。
② 物件の質と分散
- 保有物件数:294件
- 取得価格合計:約1.1兆円
- 地域分散:東京圏が約83%、その他は主要政令市など
- 用途分散:オフィス・住宅・商業施設・物流・ホテル
総合型REITとして国内最大規模を誇り、用途・地域ともに幅広く分散されています。特にオフィスと住宅の比率が高く、2025年2月期の稼働率は99.2%と極めて高水準でした。
③ 財務の健全性
- 総資産:1兆1,869億円
- 有利子負債残高:5,287億円
- LTV(負債比率):44.5%
- 格付け:JCR AA(安定的)、R&I AA-(安定的)
LTVは40%台半ばとやや高めですが、格付けはAA水準とREIT市場でも高い評価を受けています。スポンサーである野村不動産ホールディングスの信用力が背景にあり、財務面での安心感も大きいといえます。
④ 割安度
投資口価格が割安かどうかを判断するにはNAV(1口あたり純資産価値)との比較が重要です。
NMFのNAVは約13万円前後と推定され、市場価格もこれに近い水準で推移しています。規模の大きい総合型REITは流動性が高く、価格が大きく乖離しにくい特徴があります。
そのため、割安度はマーケット環境次第ですが「極端な過小評価を受けにくい銘柄」と言えるでしょう。
⑤ 将来性・成長戦略
NMFは「外部成長」「内部成長」「ESG対応」を柱としています。
- 外部成長:スポンサー開発物件の取得。2025年には「プラウドフラット日暮里」などを追加。
- 内部成長:高稼働率を維持しつつ、住宅やオフィスでの賃料増額交渉を進める。
- ESG対応:グリーン認証取得率65%。2030年には70%を目標。温室効果ガス排出量を2019年比で80%削減する方針。
ショック耐性をどう見るか?
投資家として気になるのが「大型ショックに耐えられるかどうか」です。
- リーマンショック(2008年):NMFは2015年に誕生したため未経験。リーマン級の金融危機耐性は未知数。
- コロナショック(2020年):現存中に経験。ホテルや商業施設が逆風を受けたものの、住宅・物流・オフィス比率の高さから分配金は安定を維持。
→ つまり「リーマン級の危機耐性は未知数だが、コロナ禍という現代のショックには高稼働率と分散力で対応できた」と評価できます。
まとめ
野村不動産マスターファンド投資法人(3462)は、
- 分配金は概ね3,400~3,600円で安定
- 総資産約1.1兆円・294物件を保有する国内最大級の総合型REIT
- LTV44.5%とやや高めだが、格付けAA水準で信用力は強固
- NAVに近い価格で取引されやすく、過大な割安リスクは小さい
- 外部成長・内部成長・ESG対応で将来性を確保
- リーマン級の経験はないが、コロナ禍では堅調に対応
という特徴を持っています。
総合型ならではの分散と規模を活かした安定性が魅力であり、長期的に安定したインカム収入を狙いたい投資家に適した銘柄といえるでしょう。