今さら人に聞けない投資用語!『繰上償還』ってなに?

はじめに
「投資信託を持っていたら、突然繰上償還の通知が届いた…!」
そんな経験をした投資家もいるかもしれません。
繰上償還(くりあげしょうかん)とは、投資信託が予定よりも早く運用終了となり、強制的に資産が払い戻されることです。
これが発生すると、投資家は意図せずファンドを売却しなければならず、思わぬ損失を被る可能性があります。
この記事では、繰上償還の仕組みや発生しやすいファンドの特徴、投資家にとってのデメリット、そして実際の事例を詳しく解説します。
1. 繰上償還とは?
本来、投資信託は設定された運用期間の間、投資家が自由に売買できる仕組みになっています。
しかし、ファンドの運用が難しくなった場合、運用会社が予定よりも早く償還を決定することがあります。
これを「繰上償還」と呼びます。
繰上償還の主な原因
- 純資産総額の減少(一定の資産規模を維持できない)
- 市場環境の変化(投資対象の人気低下やパフォーマンス不振)
- 運用コストが利益を上回る(運用会社の採算が取れなくなる)
- 規制やルールの変更(ESG投資規制や新たな金融ルールの影響)
繰上償還が決まると、投資家は強制的にファンドを解約させられ、投資先を再検討する必要が出てきます。
2. 繰上償還が発生しやすいファンドの特徴
すべての投資信託が繰上償還のリスクを抱えているわけではありません。
特に、以下のようなファンドは繰上償還の可能性が高いため、注意が必要です。
① 純資産残高が少ないファンド
- ファンドの運用には一定の資産規模が必要です。
- 純資産残高50億円以下のファンドは、繰上償還リスクが高まる傾向があります。
② アクティブファンド
- アクティブファンドは市場平均を上回ることを目指すものの、成績が悪化すると資金流出が加速します。
- 人気低下 → 資産減少 → 繰上償還の流れに陥りやすい。
③ テーマ型ファンド
- 特定の業界やトレンドに投資するファンド(例:EV関連、AI関連、バイオテクノロジーなど)は流行り廃りが激しい。
- 短期間で資金が集まるが、流行が終わると急速に資金流出が進む。
④ 高コストのファンド
- 手数料が高いファンドほど、投資家がコスト負担を嫌がり、資金流出が発生しやすい。
3. 繰上償還のデメリット
繰上償還が発生すると、投資家には以下のような不利益が生じます。
✅ 強制的に売却される
市場の状況に関係なく、投資家の意思に関係なく資産が払い戻される。
→ 市場が暴落中の場合、大きな損失になる可能性も。
✅ 再投資の手間が発生
払い戻された資金を再投資するには、新たなファンドを探さなければならず、投資戦略を練り直す手間がかかる。
✅ 税金の問題
売却益が発生した場合、20.315%の税金が課される。
→ 本来、長期投資で運用し続けたかった人にとっては、不本意な課税となる。

4. 実際に繰上償還したファンドの事例
過去に繰上償還となったファンドの事例を見てみましょう。
① 三菱UFJアセット『チャイナ・イノベーション・オープン』
- 設立当初、中国のハイテク企業を中心に投資を行い、成長が期待された。
- しかし、中国政府の規制強化や米中対立の影響を受け、投資先の株価が大幅に下落。
- 投資家の資金流出が止まらず、2023年9月20日に繰上償還を決定。
→ 教訓:規制リスクの高い国の投資は慎重に!
② 楽天・ポジティブ・インパクト株式ファンド
- ESG投資(環境・社会に配慮した投資)をテーマに、世界のサステナブル企業に投資。
- 一時期、ESG投資ブームで資金が流入したが、ブームが落ち着くと急速に資金流出。
- 2023年、運用コストが維持できずに繰上償還へ。
→ 教訓:流行りの投資テーマは長続きしないことも!
5. 繰上償還を避けるために
繰上償還のリスクを避けるためには、以下のポイントを押さえて投資しましょう。
✅ 純資産残高が安定しているファンドを選ぶ(50億円以上が望ましい)
✅ インデックスファンドを中心にポートフォリオを構築する
✅ 流行に乗ったテーマ型ファンドを過剰に保有しない
✅ 手数料の安いファンドを選ぶ(信託報酬0.5%以下が理想)
6. まとめ
✅ 繰上償還は、ファンドの運用が途中で終了し、強制的に資産が払い戻されること
✅ 純資産残高が少ないファンドや、アクティブファンド・テーマ型ファンドは繰上償還リスクが高い
✅ 過去の事例から学ぶと、流行りのテーマ型ファンドや高リスク市場のファンドが繰上償還されやすい
✅ インデックスファンドや純資産残高が安定しているファンドを選び、リスクを回避することが重要!
繰上償還のリスクを知ることで、長期的に安定した資産運用が可能になります。
流行に飛びつくのではなく、長期目線で信頼できるファンドを選びましょう!