今さら人に聞けない投資用語!『ROA(総資産利益率)』ってなに?
はじめに
企業分析の記事を読んでいると、
ROEと並んで、もうひとつよく出てくる指標があります。
それがROA(総資産利益率)です。
- ROEは聞いたことがある
- でもROAは正直よく分からない
- ROEと何が違うの?
そんな疑問を持ったまま、
なんとなく読み飛ばしてしまっていないでしょうか。
ROAは派手さはありませんが、
企業の足腰を静かに映し出す、とても大切な指標です。
この記事では、
ROA(総資産利益率)を
「なんとなく分かる」から「意味がつかめる」状態まで、
ゆっくり解説していきます。
① ROA(総資産利益率)の読み方と意味
読み方
ROA(Return on Assets)
日本語では
アール・オー・エー
または
総資産利益率(そうしさんりえきりつ)
と読みます。
意味を一言で言うと
「会社が持っている“すべての資産”を使って、どれだけ利益を生み出しているか」
を表す指標です。
ROEが「株主のお金」に注目する指標だったのに対し、
ROAは会社全体の経営効率に目を向けます。
② ROAはどうやって計算するの?
ROAの基本的な計算式は、次のとおりです。
ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
ここでいう「総資産」とは、
- 自己資本(株主のお金)
- 借金(銀行などからの借入)
をすべて合計したものです。
数字でイメージしてみましょう
ある会社が、
- 総資産:1,000億円
- 当期純利益:50億円
だった場合、
ROA = 50 ÷ 1,000 × 100 = 5%
となります。
③ ROAが高い会社は何がすごいの?
ROAが高いということは、
- 自己資本だけでなく
- 借金も含めた“すべての資産”を
- 無駄なく使って
- しっかり利益を出している
という意味になります。
たとえるなら、
- 大きな工場
- たくさんの機械
- 在庫や設備
こうしたものを、
サボらせずに働かせている会社というイメージです。
④ ROAはどれくらいあれば良いの?
ROAは業種によって水準が大きく異なります。
一般的な目安としては、
- ROA 5%以上:効率的な経営
- ROA 10%以上:かなり優秀
とされることが多いです。
ただし、これはあくまで目安です。
業種による違いの例
- 製造業・小売業:ROAは低めになりやすい
- IT・サービス業:ROAが高くなりやすい
- 銀行・不動産:ROAはかなり低いのが普通
そのため、ROAは必ず同じ業種同士で比べることが大切です。
⑤ ROAの良いところ──借金をごまかせない
ROAの最大の特徴は、
借金の多さをごまかしにくいところです。
前回の記事で解説したROEは、借金を増やす自己資本を小さくすることで、
数字が高く見える場合があります。
一方でROAは、借金も自己資本もすべて含めた「総資産」を使うため、
無理な借金経営は数字に表れやすいのです。
⑥ ROAの注意点──低いからダメ、ではない
ROAは便利な指標ですが、
低いからといって即ダメな会社、というわけではありません。
たとえば、
- インフラ企業
- 鉄道会社
- 電力会社
などは、大きな設備や巨額の資産を必要とするため、
ROAはどうしても低くなります。
しかし、安定した収益社会的に重要な役割を担っている企業も多く、
ROAが低い=悪い経営 とは限らないのです。
⑦ ROAはROEとセットで見ると意味が深まる
ROAは、
ROEと一緒に見ることで、本当の姿が見えてきます。
例えばこんな見方
- ROEが高く、ROAも高い
→ 経営効率が良く、財務も健全 - ROEは高いが、ROAが低い
→ 借金を使ってROEを押し上げている可能性 - ROEもROAも低い
→ 利益体質に課題あり
このように、
2つの指標を並べるだけで、会社の性格が見えてくる
のが大きな魅力です。
⑧ ROAは「会社の体力測定」
ROAは、
株価のように派手に動く数字ではありません。
ですが、
- 会社がどれくらい無理をしているか
- 地に足のついた経営か
- 長く続きそうなビジネスか
を、静かに教えてくれます。
言い換えるなら、
ROAは会社の体力測定の結果 のようなものです。
瞬間的なスピードではなく、
持久力を見る指標と考えると、しっくり来るかもしれません。
まとめ
最後に、ROAのポイントを整理します。
- ROAは「会社全体の資産を使って、どれだけ利益を出しているか」を見る指標
- 借金も含めて評価するため、経営の地力が分かりやすい
- 目安は5%以上だが、業種ごとに必ず比較する
- ROEとセットで見ることで、数字の意味が深まる
ROAは、
「派手ではないけれど、知っていると安心できる指標」です。
一気に理解しようとしなくて大丈夫。
企業を見るときに、
「ROAはどれくらいだろう?」
と、そっと確認できるようになれば十分です。
今日も、焦らず、比べず、
自分のペースで学んでいきましょう。


