【J-REIT銘柄紹介その⑥】イオンリート投資法人(3292)~生活インフラに投資する“安定型”リート~
はじめに
今回ご紹介するのは、イオンリート投資法人(3292)です。
イオングループが運営する商業施設など、「地域の生活を支えるインフラ資産」に投資するJ-REITで、景気の波に左右されにくい“安定型ポートフォリオ”が特徴です。
イオンモールを中心とした安定賃料収入に加え、
近年は底地(そっち)投資を組み入れることで、より安定性を高めています。
この記事では、投資家が注目すべきポイントを5つの視点から解説します。
① 投資対象の特徴:生活に密着した「商業インフラ」リート
イオンリート投資法人は、イオングループの商業施設を中心に投資するJ-REITです。
2025年7月期時点での保有物件は53物件・総額4,807億円。
「イオンモール」「イオンタウン」など、地域住民の生活に直結する施設が多く、
そのうち約9割がイオングループがテナントとして入居する物件です。
このため、経済環境に関係なく安定した賃料収入が見込め、
稼働率100%を継続中。
② 分配金の推移:25期連続の安定分配、3,414円で過去最高
2025年7月期(第25期)の分配金は1口あたり3,414円(前期比+54円)。
わずかですが過去最高を更新しました。
| 期 | 決算期 | 分配金(1口あたり) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 第24期 | 2025年1月期 | 3,360円 | 増配基調 |
| 第25期 | 2025年7月期 | 3,414円 | 過去最高 |
| 第26期(予想) | 2026年1月期 | 3,400円 | 小幅減配見通し |
| 第27期(予想) | 2026年7月期 | 3,390円 | 安定推移予想 |
地震保険金の特別利益や底地収入の増加が寄与し、営業収益は215億円(前期比+3.8億円)と堅調。
長期的には3,300円台を安定維持する見通しで、
“ゆるやかな増配リート”として高い評価を得ています。
③ 収益構造の特徴:底地投資でリスクを低減
イオンリートの強みは、近年強化している底地投資戦略にあります。
底地とは、建物の所有者(テナント)に土地を貸して賃料を得る仕組み。
2025年上期には、カスミ(U.S.M.Hグループ)運営施設の底地5物件を新規取得(総額約81.9億円)。
修繕費や固定資産税の負担がなく、安定したキャッシュフローを得られる点が特徴です。
これにより、商業施設リートとしては珍しく、
「物件の老朽化リスクを抑えながら収益を確保できる」構造を確立。
④ 財務の健全性:LTV約45%、調達コスト0.9%台と堅実運営
財務面でも、イオンリートは極めて保守的な姿勢を維持しています。
- LTV(有利子負債比率):45.0%
- 平均借入金利:0.93%
- 借入期間:平均3.1年(返済分散化)
借入先もメガバンク・信託銀行を中心に分散されており、
金利上昇局面でも急激な財務悪化のリスクは限定的です。
さらに借入余力は約380億円と十分な余裕があり、
将来的な物件取得や修繕投資にも対応可能。
⑤ サステナビリティ・評価面:ESG格付け「A」を維持
イオンリートはESG分野でも高評価を得ています。
- MSCI ESG格付け:A(2025年も維持)
- DBJ Green Building認証:★5(4物件)
- CASBEE不動産Sランク取得物件あり
環境配慮型設備の導入や、地域共生型施設の整備など、
「生活インフラとしての持続可能性」を重視した運営が特徴です。
特に、再生可能エネルギー活用や店舗内脱炭素施策は、
他の商業リートに先行する取り組みとして評価されています。
今後の見通し
今後は、イオン相模原SCの大規模改装など既存物件の価値向上投資に加え、
底地のさらなる取得を進める方針です。
分配金は第26期・第27期にかけてやや減少見通し(3,400円前後)ですが、
中長期的には安定した利回りと高稼働を維持できる可能性が高いとみられます。
まとめ:生活に根ざした「守りのリート」
- 投資対象は「生活に欠かせない商業施設」中心。
- 稼働率100%、イオングループとの長期契約で安定収入。
- 底地投資を拡大し、リスクをさらに分散。
- 財務・ESG評価ともに堅実。
- 長期投資における“安定セクター枠”として位置づけ可能。
イオンリートは、派手さはないものの、
「長く持って安心できるJ-REIT」の代表格といえる存在です。
生活に寄り添い、安定を積み重ねるリート。
それが、イオンリート投資法人の真価です。


