ゴリラ先生のやさしい投資教室│第18回 ゴールのないマラソンは走れない!出口戦略ってなに?

スーツとメガネがトレードマークの、頼れるお金のナビゲーター。
知識は豊富だけど説明はやさしく、質問には真剣に向き合ってくれる。
今日もハルトとミナミの“なぜ?”に、穏やかに答えてくれる先生。

YouTubeで見たFIRE動画に憧れて、投資に興味を持った13歳。
テンバガーや仮想通貨にすぐ飛びつく、元気でちょっとビビりなタイプ。
まだ投資は未経験で、ミナミやゴリラ先生に教わりながら勉強中。

SNSで投資を知り、「お金の勉強って大事かも」と思い始めた13歳。
慎重派で、定期預金や貯蓄型保険に安心感を覚えるタイプ。
ハルトの勢いに振り回されつつも、一緒に少しずつ学んでいる。

はじめに│投資は「いつ使うか」まで考えていますか?

ねえゴリラ先生、ボク、将来FIREしたいんだけど、投資っていつ終わらせればいいの?積み立ては順調だけど、ゴールがよく分からなくて…

わたしは老後のために投資を続けてるけど、60歳になったとき、どんなふうに使えばいいのかって考えたことなかったです…

とても良い質問ですね。投資をしている方の多くが“どうやって増やすか”ばかりに気を取られてしまい、“どうやって使うか”を後回しにしてしまいがちです。

増えればそれでOKって思ってたけど、ゴールがないまま走るのって、マラソンみたいにきついかも…

まさにその通りです。今日は「出口戦略」、つまり資産を“使う段階”のお話をしましょう。
出口戦略って、どんな意味?

あらためて聞きたいんですけど、出口戦略って何なんですか?

かんたんに言えば、投資で増やしたお金を「いつ」「どうやって」「どのくらい」取り崩して使っていくか、その計画のことですね。

たとえば、ボクが40歳でFIREするとして、そのときに全部使うのか、ちょっとずつ使うのか…ってこと?

そういうことです。人によって目的も違えば、生活スタイルも違います。出口の設計図がないと、せっかく貯めたお金をうまく活かせないんです。
出口戦略がないと、こんな事態に…

実際に多くの人が陥るのが、“使えない”状態なんですよ。

使えない…? お金が足りないとかじゃなくて、ですか?

いいえ。たとえば、こういう例があります。
- ある人は、60歳で1,500万円を運用で増やしました。でも、「まだ増えるかもしれない」と使うのをためらい続け、結局70歳になっても使えない。
- またある人は、株価が下がると「このタイミングで引き出したくない」と考えて、必要なお金まで引き出せず生活が苦しくなる。
- さらに別の人は、漠然と不安になり、節約しすぎて「使う喜び」を感じられないまま終わってしまったというケースも。

それ…FIREしたのに毎日お金の心配してたら意味ないよね。

“使う覚悟”がないと、かえってお金に縛られちゃうんですね。
出口戦略には主に3つの方法がある

ここからは、実際の方法について説明しましょう。代表的な出口戦略は、次の3つです。
① 一括で使うタイプ

まずは、まとまった資金を一度に使う方法です。
- 教育資金(子どもの大学進学、留学費など)
- 住宅購入の頭金やリフォーム
- 起業や開業資金
- 車の購入
- 老人ホーム入居費用

わたしの祖父母が60歳のとき、老後の住まいをバリアフリーにリフォームしたんですけど、それも一括タイプですよね。

その通りです。必要なときにパッと使えるよう、目的ごとの口座で準備しておくのもひとつの工夫です。
② 少しずつ取り崩すタイプ

これはFIRE系でよく聞くやつだ!「4%ルール」とか!

そのとおり。毎年一定の割合や金額を引き出す方法です。例を挙げると…
- 年間3〜4%の定率で資産を取り崩す(例:3,000万円の4%=年120万円)
- 毎月10万円ずつ、年間120万円を定額で取り崩す

定率型のメリットはインフレにも対応しやすいこと。ただし資産が減るスピードが読みにくい点には注意が必要です。
③ インカム型(配当・分配金でまかなう)

これは、元本は減らさずにお金が入ってくるんですよね?

その通りです。米国高配当投資信託(SCHD系)や日本のJ-REIT、個別株などの配当金を生活費に充てる方法ですね。

ボクこれが理想かも! 投資しながら毎月お金が入ってくるなんて最高だよ!

その場合、どれくらいの投資額が必要かを逆算しておくといいですね。たとえば年間120万円の配当が必要なら、利回り3.5%なら約3,430万円の投資元本が必要になります。

うっ…先は長そうかも…

お二人ともまだお若いですから、焦らずにこつこつと積み立てていきましょう。
目的に応じて、正しい出口戦略は違う

わたしは老後に備えてるけど、60歳以降のライフプランにあわせて戦略を決めなきゃですね。

そのとおりです。特にiDeCoは“出口に制限”がある制度なので、その前提も踏まえましょう。
- iDeCoは60歳以降でないと引き出せない
- NISA(新制度)なら「売却益・分配金は非課税」で柔軟性あり

ボクのFIREは50歳が目標だから、つみたてNISAで増やして、配当型の投信にスイッチしていくのがよさそうだな!

素晴らしい目標ですね!ライフステージや使う時期によって、戦略の組み方は変わってきます。これが“目的から逆算する投資”の考え方です。
「使うために増やす」が本当の資産運用

お二人とも、今日の話を通してよく理解してくれましたね。投資とは“使うためにする”ものであって、“増やすこと自体”が目的ではないのです。

安心して老後を過ごすには、どう使うかを最初からイメージしておくのが大事ですね。

ボクもFIRE後の生活費や医療費、趣味のことまで考えて、使い道にワクワクする投資にしようっと!

それが理想です。ゴールのあるマラソンは、走る過程も意味を持ちます。お金も同じですね。目的を持ち、使う準備まで整えてこそ、本当の意味での“資産”になるのですよ。