【9月月次レポート】SBI・S・米国高配当株式ファンドを本家SCHDと比較│円で育てるドル資産──円高局面でも揺るがない堅実運用の魅力

はじめに
2025年9月の「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型/SBI SCHD)」は、
1万口あたり85円(すべて特別分配金)の分配を実施しました。
同時に、基準価額は9,522円(前月比▲127円)と小幅下落。
この数字だけを見て「値下がりした」と判断するのは早計です。
9月は円高(1ドル=150円→146円台)が進み、
円換算での評価額が下がったことが主な原因です。
ファンドそのものの運用が悪化したわけではなく、
むしろ中身は堅実で“守りの構成”を維持しています。
この記事では、本家ETF「SCHD」との比較を通じて、
SBI版SCHDが“円でドル資産を育てる投資”である理由を見ていきましょう。
SCHDとは?──米国で信頼される「配当王ETF」
SBI版のベースになっているのは、
米国チャールズ・シュワブ社が運用する「Schwab U.S. Dividend Equity ETF(SCHD)」です。
- 運用開始:2011年
- 対象指数:ダウ・ジョーンズ U.S. ディビデンド100インデックス
- 経費率:0.06%
- 特徴:
- 過去10年間連続で配当を支払っている企業を中心に選定
- 高い利益率とキャッシュフローを重視
- 配当利回りは約3.6〜3.8%(2025年時点)
いわば「高配当株の優等生を100社集めたETF」。
長期投資家の間では、安定した分配金と増配率で高く評価されています。
SBI版SCHDは「円で買える本家SCHD」
SBI版SCHDは、このETFを日本円で購入できるように設計した投資信託です。
つまり、「SCHDの日本版」といえる存在です。
比較項目 | SCHD(本家ETF) | SBI・S・米国高配当株式ファンド |
---|---|---|
通貨 | 米ドル建て | 日本円建て |
購入方法 | 米国ETF(海外証券口座が必要) | 投資信託(NISA対応) |
為替リスク | あり(ドル資産) | あり(円換算) |
配当支払い | 四半期ごと(ドル) | 年4回(円換算) |
経費率 | 0.06% | 実質0.1227%(ETF+信託報酬) |
このように、SBI版は日本のNISA口座でも購入可能で、
米ドルを用意せずに円のまま米国高配当株ETFを間接的に保有できるのが最大のメリットです。
円高で下がるのは「仕組み上の宿命」
9月の基準価額が下がった理由は、
米国株の調整と円高による「評価換算の差」です。
例えば、
- SCHD(ドル建て)の価格が同じでも、
- 1ドル=150円 → 146円になれば、円換算では約2.7%下落します。
つまり、ドル建てでは価値は変わらないのに、
日本円に直すと「下がって見える」という仕組みです。
これはリスクというよりも、「為替の波をそのまま映す鏡」。
長期的には円安トレンドが続いているため、
円高局面は“ドル資産を安く買える時期”とも言えます。
ファンドの構成は堅実そのもの
9月の組入セクターを見ると、SBI SCHDの運用方針はブレていません。
上位セクター | 比率 |
---|---|
エネルギー | 19.3% |
生活必需品 | 18.5% |
ヘルスケア | 16.1% |
資本財・サービス | 12.3% |
金融 | 9.4% |
この3大ディフェンシブ(エネルギー・生活必需品・ヘルスケア)で全体の54%を占める構成。
派手なテック株や景気敏感株を避け、配当の安定を最優先したポートフォリオです。
上位銘柄も安定感のある顔ぶれが並びます。
銘柄名 | セクター | 比率 |
---|---|---|
アッヴィ | ヘルスケア | 4.39% |
ロッキード・マーチン | 資本財(防衛) | 4.14% |
シスコシステムズ | 情報技術 | 4.06% |
ベライゾン | 通信 | 4.04% |
シェブロン | エネルギー | 3.95% |
特にヘルスケア・防衛・通信・エネルギーといった分野は、
景気変動に左右されにくく、不況でも安定配当を出し続ける企業が多いのが特徴です。
円で買っても、実質は「ドルを育てる」投資
SBI版SCHDは円建ての投資信託ですが、
その中身は米国ETF(=ドル建て)です。
つまり、投資家は円でドル資産を積み立てていることになります。
- 為替が円安に進めば、円換算の資産価値が上昇。
- 為替が円高に進んでも、ドルで利益を生む企業が基礎にあるため、長期では価値を維持。
- 結果的に、円資産だけでは得られない通貨分散効果が得られる。
ドル建ての口座を開かなくても、
このファンドを通して“ドルで配当を生む仕組み”を持てる。
これこそが、SBI SCHDの真価です。
特別分配金=「育成期」のサイン
今回(第3期)も分配金は特別分配金(85円)でした。
これは運用益ではなく元本の一部払い戻しにあたるため、課税対象外です。
一般的に、特別分配金が続くと「実質利回りが低いのでは?」と不安に感じる方もいますが、ファンド設定からまだ1年未満の“成長初期”ではよくある設計です。
ファンドが安定的に配当収益を積み上げるにつれ、
今後は普通分配金(運用益からの分配)が増えていくと考えられます。
つまり、今は「分配金を育てる時期」です。
為替の波を利用して、ドル資産を育てる
為替相場は読めません。
しかし、「読めないからこそ、積立投資が有効」です。
円高の時期に買えば、同じ金額でより多くのドル資産を購入できる。
円安の時期には、保有資産の評価額が上昇する。
どちらに動いても、長期的には平均化されてリスクが軽減されます。
円高は“ドルを安く買える”タイミング。
円安は“資産が増える”タイミング。
このように、どちらの局面でも“味方につけられる”のが、
SBI SCHDのような長期ドル資産ファンドの強みです。
まとめ
観点 | 内容 |
---|---|
分配金 | 85円(特別分配金) |
基準価額 | 9,522円(前月比▲127円) |
主因 | 円高・分配落ち |
ポートフォリオ | ディフェンシブ中心(生活必需品・ヘルスケア・エネルギー) |
投資価値 | 円建てでドル資産を積み上げる通貨分散効果 |
投資姿勢 | 為替に振り回されず、長期で“ドルを育てる”視点を |
おわりに
9月のSBI SCHDは、
基準価額こそ円高で下がったものの、
ファンドの構成・資金流入・安定配当志向はいずれも健全でした。
- 分配金は85円(特別分配)で安定支給
- エネルギー・生活必需品・ヘルスケア中心の堅実構成
- 為替変動を通して「円でドル資産を育てる」設計
短期的な円高局面は、むしろ「長期投資家が育てるチャンス」。
ドルで配当を生む企業にコツコツと投資し、
通貨の壁を越えた安定収益の仕組みを自分の中に作ることが、
このファンドを活かす最大のポイントです。
円高を恐れず、円でドルを育てる。
SBI SCHDは、“長期分散投資の本流”を静かに体現するファンドです。