FIREを目指すならiDeCoは不要?― 目的と時間軸から考える、iDeCoとのちょうどいい距離感
はじめに
SNSや動画で資産形成の話題を追っていると、
「FIREを目指すならiDeCoは意味がない」
という意見を目にすることがあります。
理由を聞くと、たしかにうなずける部分もあります。
iDeCoは原則として60歳まで引き出せません。
早期リタイアを目指すFIREとは、相性が悪そうに見えます。
ただ、この言葉をそのまま受け取ってしまうと、
少しだけ大切な前提が抜け落ちてしまう気もします。
この記事では、
「FIREを目指すならiDeCoは不要なのか?」
という問いに、
正解・不正解で答えるのではなく、
なぜそう言われるのか、どこまでが正しく、どこからが誤解なのかを
ゆっくり整理していきます。
そもそもFIREとiDeCoは何を目指しているのか
まずは、FIREとiDeCoが目指しているものの違いを確認しておきます。
働く・働かないを自分で選べる状態を、できるだけ早く手に入れることを目標にします。
生活費を資産収入などでまかない
時間や働き方の自由度を高める考え方。
老後資金を準備するための制度です。
長い時間をかけて積み立て、
税制の優遇を受けながら、
60歳以降の生活を支えることを目的としている。
なぜ「FIREを目指すならiDeCoは不要」と言われるのか
では、なぜこのような意見が広まりやすいのでしょうか。
最大の理由は、
iDeCoのお金は、FIRE後すぐの生活費には使えないからです。
FIREでは、
「何歳で仕事を手放せるか」
「その後の生活費をどう確保するか」
が重要になります。
その視点で見ると、
60歳まで引き出せないiDeCoは、
確かに使いづらい資産に見えます。
このため、
「FIREを目指すならiDeCoは不要」
という結論にたどり着く人が出てくるのも、無理はありません。
その意見は、どこまで正しいのか
ここで一度、その意見を肯定してみます。
FIRE直後の生活費として、
iDeCoをあてにすることはできません。
近い将来に使う予定のお金を、
iDeCoに入れるのは、制度の設計と合っていません。
この点において、
「FIREのための資金」として見れば、
iDeCoは向いていない、という指摘は正しいと言えます。
ただし、ここで話が終わってしまうと、
少し視野が狭くなってしまいます。
FIRE=すべての資金を早く使う、ではない
FIREを達成したとしても、
人生がそこで終わるわけではありません。
FIRE後も、
60歳以降の時間は確実に訪れます。
つまり、老後という時間軸そのものが、消えるわけではありません。
すべての資金を、
「FIRE直後から使うお金」として用意する必要はない、
という考え方も成り立ちます。
iDeCoは「FIRE資金」ではなく「人生後半の土台」
iDeCoは、
FIREを支える資金ではなく、
人生の後半を支える土台として考えることができます。
FIRE前後の生活費は、
流動性の高い資産でまかなう。
一方で、
60歳以降の生活に備える部分を、
iDeCoで静かに積み立てておく。
こうして役割を分けて考えると、
iDeCoはFIREの敵でも、万能な味方でもなく、
別の役割を持った資産として位置づけられます。
iDeCoと距離を置いたほうがいい人もいる
もちろん、すべての人にiDeCoが向いているわけではありません。
- 生活費にまだ余裕がない
- まずは手元の資金の自由度を高めたい
- 制度に縛られること自体が強いストレスになる
こうした場合、
無理にiDeCoを使わなくても問題ありません。
iDeCoは「やらなければ損をする制度」ではなく、
使うと楽になる人がいる制度です。
大切なのは「制度」より「自分の時間軸」
結局のところ、
iDeCoを使うかどうかは、
FIREを目指すかどうかだけで決まるものではありません。
- 何歳ごろに
- どのお金を
- 何のために使いたいのか
この時間軸が整理できていれば、
iDeCoを使うか、使わないかは、自然と決まってきます。
制度に合わせて人生を決める必要はありません。
人生の設計に合わせて、制度との距離を決めればいいのです。
おわりに
「FIREを目指すならiDeCoは不要?」という言葉は、
一部は正しく、一部は省略されています。
FIREとiDeCoは、
目的も、時間軸も違います。
だからこそ、単純に相性が良い・悪いと切り分けるのは難しいのです。
焦って結論を出さなくても大丈夫です。
考え続けること自体が、
お金と向き合う力を育ててくれます。
自分のペースで、
自分の時間軸に合った選択を、
少しずつ整えていけばいいのだと思います。


