高配当株投資家必見!通信セクターのリーマンショック時データを徹底検証

はじめに
高配当株投資において、どのセクターが「暴落に強いか」を知ることは、長期投資の安心感を大きく左右します。相場が急落しても配当を出し続け、株価も比較的早く持ち直す銘柄に投資していれば、狼狽売りに陥ることなく安定した資産形成が可能になります。
本記事では、リーマンショック期(2008年〜2010年)における通信セクター(NTT・KDDI・ソフトバンク)の株価と配当の推移を検証します。ディフェンシブセクターとして注目される通信株が、実際にどれほど安定感を示したのか、過去データに基づいて詳しく見ていきましょう。
対象とした通信3社とその特徴
1. 日本電信電話(NTT・9432)
旧電電公社。日本最大の固定回線・通信インフラ事業者で、法人向けITサービスやデータセンター事業なども手がけます。安定的なキャッシュフローが強み。
2. KDDI(9433)
auブランドで知られるモバイル通信事業者。個人向け通信に加え、法人向けソリューションや電力小売りなどにも展開。成長と安定のバランスが取れた企業。
3. ソフトバンクグループ(9984)
当時は通信事業が主軸で、ボーダフォン日本法人を買収したばかりの時期。現在の投資会社的性格は薄く、モバイル通信の競争力強化に注力していた。
3社の配当利回り推移(2008〜2010)
銘柄名 | 年末株価(円) 2008 / 2009 / 2010 | 年間配当(円) 2008 / 2009 / 2010 | 配当利回り(%) 2008 / 2009 / 2010 |
---|---|---|---|
NTT | 4,680 / 3,650 / 3,670 | 110 / 120 / 120 | 2.35 / 3.29 / 3.27 |
KDDI | 約470,000 / 480,000 / 500,000(※旧株) | 11,000 / 13,000 / 15,000 | 2.34 / 2.71 / 3.00(※概算) |
ソフトバンクG | 801 / 1,085 / 1,405 | 2.5 / 2.5 / 5.0 | 0.31 / 0.23 / 0.36 |
※KDDIはその後1株→100株の株式分割を実施。
※KDDIの利回りはおおよその旧株ベースから換算した目安。
株価の変化と利回りの関係
株価はどう動いたか?
- NTTは2008年に22%下落、以降は底堅い動き。極端な乱高下がなく、リーマンショックの影響を緩やかに吸収。
- KDDIは2008年に小幅下落後、2009~2010年は横ばい~やや上昇傾向。需給面でも安定していた。
- ソフトバンクは2008年に急落後、2009~2010年に急反発。業績好転と成長期待で上昇。
配当はどう変わったか?
- NTTとKDDIはリーマン期も連続増配を継続。
- ソフトバンクは2010年度にようやく増配(2.5円→5円)したが、依然として利回りは1%未満。
通信セクターの配当政策の安定性
リーマンショック級の金融危機でも、通信株が配当を維持できた背景には次のような要因があります。
安定したキャッシュフロー
通信は公共インフラに近い事業であり、不況でも利用をやめにくいサービスです。企業も個人も、電話・インターネット回線の支払いを最優先で続ける傾向があるため、収益が安定しやすいのです。
設備投資型だが参入障壁が高い
莫大な初期投資が必要で、新規参入が困難な分野です。そのため、競合が限られ、価格競争も過度に激化しにくい構造があります。
長期的に増配を重視する企業文化
NTTやKDDIは、株主還元を中期経営計画の中に明確に位置づけており、安易な減配を避ける方針を掲げています。特にKDDIは「連続増配」を長期戦略として打ち出しており、結果として投資家の信頼を得てきました。
財務指標で見る安定性
銘柄 | 2009年度ROE | 自己資本比率 | 備考 |
---|---|---|---|
NTT | 約8.5% | 約45% | 安定利益だが資本構成は重め |
KDDI | 約13.0% | 約55% | 高ROE・高資本比率で好財務 |
ソフトバンクG | 約20%超 | 約15% | 当時は有利子負債が非常に多い |
※データは概算。参考値としてご確認ください。
KDDIは高ROE・高自己資本比率で、非常にバランスの良い財務体質を実現していました。一方、当時のソフトバンクはまだ借入による成長ドライブ中であり、配当より投資重視の姿勢が読み取れます。
他セクターとの比較(過去記事より)
セクター | 株価下落耐性 | 配当の維持力 | 回復の早さ |
---|---|---|---|
エネルギー | ×(暴落) | ×(減配あり) | △ |
金融 | ×(無配も) | ×(大減配) | × |
資本財 | △ | △ | △ |
情報技術 | △ | △ | ○ |
ヘルスケア | ○ | ◎ | ○ |
通信 | ◎ | ◎ | ○ |
通信セクターは、ヘルスケアと並び、高配当・下落に強い・早期回復という3拍子がそろったセクターです。高配当株投資を行ううえでは、ポートフォリオの土台として組み込むのに最適といえます。
投資家目線での戦略提案
長期ホールド向きの資産
NTTやKDDIのように、安定業績・配当成長が期待できる大型株は、リスク許容度が低い方でも保有しやすい銘柄です。
特に高配当ETFや投資信託でも、通信株の組み入れ比率が高く設定されているケースが多く、信頼度は高いです。
分散投資の一翼として
景気敏感な金融株や素材株と比べて、通信株は市場の変動を和らげてくれるバランサーの役割が期待できます。
ポートフォリオのうち一定割合を通信セクターで構成することで、暴落時のメンタル安定にもつながります。
おわりに
リーマンショックという歴史的暴落を通じて、通信セクターは「守りのセクター」としての真価を発揮したことが分かりました。安定した収益構造、継続的な株主還元姿勢、そして比較的早期の株価回復——どれを取っても、通信株は高配当投資家にとって魅力的な選択肢と言えるでしょう。
特に、今後の市場でも不況や下落局面が避けられないとすれば、こうしたセクターの存在はより一層重要になってきます。あなたの投資スタイルに応じて、NTT・KDDIといった国内通信株をコア資産として検討する価値は十分にあるのではないでしょうか。