高配当株投資家必見!情報技術セクターのリーマンショック時データを徹底検証

はじめに
2008年のリーマンショックは、金融セクターだけでなく、世界中の企業活動に大きな衝撃を与えました。とくにIT産業は、グローバル需要と密接に結びついており、企業や消費者の設備投資が減少すると、直接的な影響を受けやすいセクターです。
本記事では、日本株における情報技術セクターの代表銘柄(富士通、NEC、日立製作所、ソニー、NTTデータ)について、2008~2010年の株価と配当金の推移を振り返ります。
リーマンショックを機に、「景気悪化時にどこまで配当が維持されるか」「どれほどのスピードで株価が回復するか」といった視点から、投資先の財務体質や事業の安定性を見極めるためのヒントを探っていきましょう。
富士通(6702):配当も株価も回復が早かった優等生
【株価推移】
- 2008年末:429円
- 2009年末:596円
- 2010年末:565円
【年間配当金】
- 2008年:8円(中間3円+期末5円)
- 2009年:6円(中間3円+期末3円)
- 2010年:10円(中間5円+期末5円)
リーマンショックによる業績悪化を受けて、2009年度は減配に踏み切ったものの、2010年度には業績回復に伴い増配。株価も2009年に40%近く上昇し、回復が早かった銘柄のひとつです。サービス・ITインフラ領域が堅調で、他の重電系企業よりも安定感がありました。
NEC(6701):無配・赤字に苦しんだ再建途上企業
【株価推移】
- 2008年末:594円
- 2009年末:478円
- 2010年末:488円
【年間配当金】
- 2008年:無配
- 2009年:4円
- 2010年:無配
2008年度の巨額赤字により無配へ転落し、2009年度に一度は復配したものの、2010年度に再び赤字となり無配に逆戻り。業績の不安定さと財務の脆弱さが株価にも反映され、3年間通じて株価は低迷しました。回復力という点では、セクター内でもワーストクラスといえる状況でした。
日立製作所(6501):歴史的大赤字からのV字回復
【株価推移】
- 2008年末:345円
- 2009年末:284円
- 2010年末:433円
【年間配当金】
- 2008年:3円(中間3円+期末無配)
- 2009年:3円(据え置き)
- 2010年:6円(増配)
2008年度は過去最大の赤字で配当を大幅に減額。株価も2年連続で下落しましたが、2010年度には業績が黒字に転じ、株価も大きく反発。セクター内で最も劇的な回復を見せた企業で、構造改革の成果が明確に現れた事例と言えます。
ソニーグループ(6758):減配はあれど、底堅い復元力
【株価推移】
- 2008年末:384.4円(調整後)
- 2009年末:534.0円
- 2010年末:585.4円
【年間配当金】
- 2008年:42.5円(当初50円→減配)
- 2009年:40円台前半と推定(維持)
- 2010年:40円台後半と推定(小幅増)
2008年度には14年ぶりの減配を余儀なくされましたが、以後は大きく配当を落とすことなく水準維持。ゲームや音楽、映画部門の回復が寄与し、株価も順調に反発。収益多角化の強みが見えた局面です。
NTTデータ(9613):景気後退に強いITサービスの安定感
【株価推移】
- 2008年末:716円相当(旧額面調整後)
- 2009年末:578円
- 2010年末:562円
【年間配当金】
- 2008年:60円相当(旧6,000円)
- 2009年:50~60円(安定配当)
- 2010年:50~60円(安定配当)
他の製造業系IT企業と異なり、官公庁や金融向けシステム開発を主力とするNTTデータは、安定した収益体質が強み。株価は緩やかに下落しましたが、配当は減配することなく維持。セクター内では最も配当安定性が高く、高配当投資家にとって魅力的な存在でした。
セクター全体の傾向と高配当投資家への示唆
リーマンショック時、情報技術セクターも例外なく業績悪化に直面しました。しかし、企業ごとのダメージの深さと回復スピードには明確な差がありました。
- 富士通やNTTデータのように、事業ポートフォリオがサービス寄りであった企業は、比較的配当を維持しやすく、回復も早かった
- 一方、NECのようにハード依存かつ赤字体質の企業では、配当の復元に時間がかかり、株価も長く低迷
- ソニーや日立のように、赤字転落を経験しても強力な構造改革で復元力を見せた例もある
高配当株投資を行う上で、「いざというときに減配しないか」「数年で復配できるだけの力があるか」という視点は極めて重要です。
同じセクターでも、事業の性質や経営の意思決定次第で、配当の安定性は大きく変わってきます。情報技術セクターに投資する際も、単に過去の利回りだけを見るのではなく、「過去にどう危機を乗り越えてきたか」という履歴をしっかり確認することが大切です。
おわりに
今回は、リーマンショック時の情報技術セクターについて、代表銘柄の株価と配当金の推移を詳しく見てきました。
他のセクター(金融、エネルギー、通信など)との比較記事も順次公開していますので、業種ごとの強みと弱みを理解し、分散と安定を意識したポートフォリオづくりの参考にしていただければ幸いです。