【2025年9月期】SBI・S・米国高配当株式ファンド(SBI・SCHD)運用報告書でわかる特徴と強み
はじめに
今回は、いつもの月次レポートよりも少し長い記事になります。
というのも、半年に一度だけ公開される「運用報告書」には、ファンドの姿をより広い視点で整理できる情報がまとまっているからです。
毎月の値動きだけを追うと、どうしても短期の揺れに心が引っ張られがちです。
ですが、半年というまとまった期間で振り返ると、下落も反発もより穏やかな流れとして見えてきます。
この記事では、SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)、いわゆる SBI版SCHD の 2025年9月期 運用報告書(全体版) をもとに、ファンドの特徴や半年間の動きをていねいに整理していきます。
読み進めるうちに、数字の波に振り回されない“長期投資のリズム”が少しずつ掴めてくるはずです。
どうぞ、落ち着いた気持ちで読み進めてみてください。
半年間の基準価額推移が教えてくれる“ファンドの歩み”
運用報告書の冒頭では、設定来からの基準価額の推移が一覧で整理されています。
これは、月ごとの数字では見えにくい「大きな流れ」を知るうえで大切な手がかりです。
設定時は 10,000円。そこから半年の間に次のような動きとなりました。
- 2025年3月:9,773円(–2.3%)
- 2025年6月:9,040円(–6.9%)
- 2025年9月:9,581円(+6.9%)
前半で下落し、夏以降に回復が進んでいることが分かります。
市場のニュースに一喜一憂していると気づきにくいのですが、こうして振り返ると、値動きにはゆったりとした周期があることが感じ取れます。
高配当ファンドは短期で評価しにくい性質があります。
半年単位のリズムを知ると、投資を続けやすくなり、数字と上手に距離を取る助けにもなります。
半年を通して何が起きたのか:上昇と下落の要因
運用報告書では、基準価額に影響した要因が期間を通じて整理されています。
読み解いていくと、短期には見えなかった背景が浮かび上がってきます。
上昇の背景
- 米国景気のソフトランディング期待
- 利下げ観測の強まり
- 半導体・AI分野の好調
- 円安の影響
特に夏以降は、情報技術セクターの好調を背景に市場が全体的に上向きました。
下落の背景
- FRBのタカ派的な発言
- 景気後退懸念
- 関税政策とその不透明感
- 一時的なドル安
これらが交互に訪れ、ファンドの基準価額に揺れをもたらしていました。
半年というまとまりで振り返ると、その揺れも一つの流れとして受け止めやすくなります。
SCHDの特徴を“構造”から理解する
S&P500と比較して「SCHDは少し動きが違う」と感じたことのある方も多いでしょう。
運用報告書では、その理由が構造面から分かりやすく整理されています。
市場を押し上げたのはハイテク
2025年前半、S&P500を力強く支えたのは情報技術・通信サービスの大型株でした。
一方、SCHDはディフェンシブ中心
SCHDは、高配当かつ財務健全性の高い成熟企業を選ぶETFです。
そのため、構成比は次のような“守りの業種”が中心となります。
- エネルギー:19.8%
- 生活必需品:19.0%
- ヘルスケア:15.7%
ハイテク比率は8.4%と、S&P500と比べるととても低め。
これが“値動きの静かさ”につながり、一方で円安時の為替影響も受けやすい構造になっています。
ここから分かるのは、
SCHDは成長株とは違うリズムで動くETF
であり、上下の幅が比較的落ち着きやすいという特徴です。
上位銘柄に見る“堅実さ”
運用報告書では、上位銘柄も明確に示されています。
- Chevron(米国を代表するエネルギー大手。原油・天然ガスの採掘から販売まで手がける総合石油企業)
- PepsiCo(食品・飲料の世界的メーカー。ペプシだけでなくスナック菓子の“フリトレー”も展開し安定収益が強み)
- AbbVie(バイオ医薬品の大手。免疫疾患やガン領域に強く、主力薬が業績を支えるディフェンシブ企業)
- Home Depot(米国最大のホームセンター。DIY需要や住宅市場と相性が良い、安定成長の小売企業)
- Verizon(米国通信大手。携帯通信インフラを支える“生活必需型”ビジネスで配当の安定性が高い)
など
資金流入が示す「静かな人気」
半年間の純資産総額を追うと、次のような増加が確認できます。
- 3月:1,224億円
- 6月:1,401億円
- 9月:1,553億円
値動きに迷う時期があっても、資金が流入し続けているというのは大きな意味を持ちます。
多くの投資家が「長く持てる商品」として評価している証拠です。
高配当ETFは値動きだけで語れません。
“選ばれ続ける理由”を数字から確認できるのは、運用報告書ならではの価値といえます。
半年の損益から見える分配金の健全性
高配当ファンドを続けるうえで気になるのは、
「分配金はちゃんと収益で賄えているのか」
という点でしょう。
運用報告書のデータでは、
- 当期利益:約95億円
- 運用コスト:約2.6億円
- 分配金:約13.7億円
となり、利益の範囲内で分配が行われています。
つまり、
- 元本の取り崩しなし
- 投資先企業からの配当収入が確保されている
- 長期保有に適した健全な構造
ということが確認できます。
数字は難しく感じられるかもしれませんが、
要するに 「無理のない分配が続いている」 ということ。
これだけでも、投資を続けるときの安心感が大きく違ってきます。
コスト構造に見る“長く持ちやすいETF”
運用報告書では、総経費率(TER)も明記されています。
- 当ファンド:0.07%
- SCHD本体:0.06%
→ 合計 0.13%
このコスト水準は国内ファンドでも非常に低く、
高配当ETF連動投資信託としてはトップクラスの効率性です。
長く持つほど効いてくるのは、派手な値動きより“コストの差”です。
静かに、しかし確実に投資家の味方になる部分です。
決算日変更と信託報酬の改善
2025年度には、信託報酬の微調整(引き下げ)や決算日の変更も行われました。
こうした細かなアップデートは、ファンドをより扱いやすくするための工夫であり、
長期の品質を支える裏方の改善ともいえます。
表には出ない部分ですが、長く付き合うファンドほど、
こうした積み重ねが安心につながります。
おわりに
半年に一度の運用報告書には、短期の波だけでは見えない“ファンドの姿”が静かに映し出されています。
高配当投資は、一歩ずつ時間をかけて育てていくものです。
値動きが気になる時期があっても、こうして半年の流れを見ると、
「焦らず続けてみよう」という気持ちが少し戻ってくるかもしれません。
SBI版SCHDは、
- 堅実な銘柄構成
- 健全な分配
- 低いコスト
を兼ね備え、長期投資に寄り添うETFです。
あなたの資産形成が、これからも静かで穏やかな時間とともに進んでいきますように。
また必要なときは、いつでも運用報告書を一緒に読み解いていきましょう。


