デジタルゴールドは本当に“資産”になりうるのか?暗号資産のリスクと現実を冷静に考える
はじめに
最近、「ゴールド(金)」の価格が過去最高を更新し、ニュースでたびたび取り上げられています。
同時に、“デジタルゴールド”とも呼ばれるビットコイン(Bitcoin)にも注目が集まりつつあります。
しかし、暗号資産は“金のような安全資産”とは似て非なるもの。
その仕組み・リスク・税制を正しく理解しないまま投資すると、大きな損失を被る可能性があります。
この記事では、暗号資産の基本的な特徴から、ボラティリティ(価格変動)・税制上の扱い・法整備の課題を整理し、
長期投資家にとって暗号資産は本当に「資産」たり得るのか?を考えます。
暗号資産とは?
暗号資産(仮想通貨)とは、ブロックチェーンという仕組みを使って発行・管理される“デジタル通貨”のことです。
代表的なものに、
- ビットコイン(BTC)
- イーサリアム(ETH)
- ソラナ(SOL)
などがあります。
中央銀行や政府が管理する通貨とは異なり、取引履歴がブロックチェーン上で分散的に記録される点が特徴です。
これにより、国境を超えて送金できる、銀行を介さない決済が可能といった利点があります。
なぜ「デジタルゴールド」と呼ばれるのか
ビットコインは、発行上限が2,100万枚と決まっており、
「金のように数が限られている=価値が保たれる」との期待から“デジタルゴールド”と呼ばれるようになりました。
実際、2020年代初頭にはインフレ懸念から「金とビットコインの二本柱で資産を守る」という考え方が広がりました。
しかし、両者には大きな違いがあります。
| 比較項目 | ゴールド(金) | ビットコイン(BTC) |
|---|---|---|
| 発行主体 | 自然資源(有限) | プログラムによる発行上限(有限) |
| 価値の裏付け | 実物資産・工業需要 | 市場の需要と期待 |
| 価格変動 | 比較的安定(年数%) | 極めて不安定(年数十%) |
| 保有形態 | 現物・ETF・純金積立 | ウォレット・取引所 |
| 法的安定性 | 高い(各国で明確な制度) | 未整備(国によって扱いが異なる |
共通点は「希少性」だけであり、安定資産としての性質は大きく異なります。
ボラティリティの高さ ― 「デジタル金塊」ではなく「ジェットコースター」
暗号資産の最大の特徴は、値動きが激しすぎること。
たとえばビットコインは――
- 2021年11月:約760万円
- 2022年12月:約240万円(▲70%下落)
- 2025年10月現在:再び約900万円台
1年で2〜3倍、あるいは半値以下になることも珍しくありません。
このような値動きは、金や株式市場の何倍ものボラティリティを持ち、
短期的な投機対象としては魅力的でも、長期の資産形成には不向きです。
税制の壁 ― 暗号資産の最大のハードル
暗号資産の税制は、株式や投資信託とは大きく異なります。
日本では、暗号資産の売却益・交換益は雑所得として扱われ、
他の所得と合算して累進課税(最大45%)がかかります。
つまり、
- サラリーマンが副収入で得た場合 → 所得が増えて税率アップ
- 利益が出ても税金で半分近く失うケースも
さらに、株式のような損益通算や3年間の繰越控除もできません。
損をしても税金面での救済がないため、リスクに見合った制度設計とは言いにくいのが現状です。
法整備の遅れ ― 「投資家保護」が追いついていない
日本では、暗号資産取引所の登録制度は存在するものの、
過去には取引所による破綻・ハッキング・経営不祥事などが度々起きています。
- 2014年:Mt.Goxのビットコイン流出事件
- 2018年:CoincheckのNEM流出事件
- 2022年:FTX破綻(海外)
これらの事件を受けて徐々に規制は整備されつつありますが、
依然として「預けた資産の扱い」「不正アクセス時の補償」「顧客資産の分別管理」などが完全とは言えません。
法整備と監督体制が不十分な市場では、投資家保護が追いつかないという現実があります。
長期投資を前提にするなら「買わなくていい資産」
暗号資産は、テクノロジーとしては革新的です。
しかし、長期の資産形成という観点では、
- 値動きが激しすぎる
- 税制上の不利が大きい
- 法制度の安定性が低い
という3重のリスクを抱えています。
“デジタルゴールド”という言葉に惑わされず、
「投資」ではなく「投機」の対象として距離を置くのが賢明です。
もしどうしても興味があるなら、
「全資産の1〜2%以内」といった範囲で“遊び資金”として持つ程度にとどめるのが現実的でしょう。
まとめ
暗号資産はブロックチェーン技術を使った新しい通貨で、「デジタルゴールド」と呼ばれることもあります。
しかし実際には価格の変動が激しく、短期間で大きく上下するなど安定資産とは言えません。
さらに、日本では利益が雑所得として最大45%課税され、株式のような損益通算もできないため、税制面でも不利です。
取引所の法整備や投資家保護もまだ不十分で、資産を安全に預けられる環境も整っていません。
これらを踏まえると、暗号資産は長期の資産形成には適さず、基本的には「買わなくていい資産」と考えるのが妥当です。
興味がある場合でも、資産の一部にとどめておくのが現実的でしょう。


